軍需産業 wikipedia|無料辞書
軍需産業(ぐんじゅさんぎょう)とは、
軍隊の日常業務から戦時の用途に供するためのエレクトロニクス関連などのシステム、機器・装置といった
兵器類とそれらの部品および材料や、資材、装備、燃料などの多様な製品を生産・販売する産業部門のことである。
国防産業(こくぼうさんぎょう)や
防衛産業(ぼうえいさんぎょう)とも言われる。
また、政府との契約にもとづき民間従業員を派遣して、正規軍が行なう積極的な戦闘行動以外の補給や保守などの主に
兵站業務を代行する
民間軍事会社も軍需産業に含めることがある。
◆ 取り巻く環境
資本主義国家では多くが民間企業で構成されているが、それ以外の体制下では国家機関が軍需産業を構成している場合がある。軍需産業は国家防衛という国家が行なう軍隊の活動を生産面でサポートする産業であるため、完全に自由な民需産業とはなり得ず、政府の恣意的な保護政策や時に強制的な政策が行使され、
軍事機密の保護のために個人の移動制限や輸出の制限が加えられる。こういった環境にある産業であるため、新規参入は結果として強く制限される反面、最新の情報通信技術のような「新兵器」が生み出せる技術を持った企業が急成長する産業でもある。
発注者が国家そのものという事で契約履行がほぼ安定しており、受注が得られれば民間企業としては経営が安定できる。現在の世界の多くの
財閥や巨大企業がその繁栄期には戦争特需で急成長した時期があったように、戦争によって繁栄しうる。しかし、現代戦は国家財政を大きく消耗させてしまうため長期的な需要とはなりづらい。逆に戦争終結で投資が無駄になることも多い。軍需産業にとって最も望ましいのは冷戦のような
軍拡競争であるといわれる。現在は冷戦終結後の
軍縮で兵器市場が縮小し、軍需産業の統合が進んでいる。
全世界の軍事費合計はソ連崩壊前の1985年には1兆2535億ドルあったが、
ソ連崩壊後の1995年には9,162億ドル、2000年には8,115億ドルと激減しており
[International Institute for Strategic Studies(IISS),The Military Balance 2006]、予定されていた装備の調達が大幅に削減されることが多くなった。こうした状況下、冷戦期に拡大した軍需産業界は危機を迎え、1994年に
ノースロップが
グラマンを、1997年には
ボーイングが
マクドネル・ダグラスを買収するなど、1990年代には多くの企業・部門が統廃合に追い込まれた。2006年現在存在するボーイング、
ロッキード・マーティン、
ノースロップ・グラマン、
レイセオン、
EADSといった巨大な軍需企業は1985年には少なくとも20以上の個別の企業あるいは軍需部門であった。
最新兵器の研究開発に多額の投資を必要とするため、米国を中心に軍需に関わるいくつかの巨大企業が誕生している。こういった軍需の巨大企業では、透明な環境での競争原理が働かないまま、国家が毎年莫大な額の兵器等を購入し、使用者である軍隊とも常に接触しているために、政治家・民間会社・軍官僚の間での癒着や不法行為が問題となる事がある。(
詳細は軍産複合体及び天下りを参照)
2006年度は地球全体で9,000億ドル以上が軍需産業に使用され、世界のあらゆる工業国では国内の軍需産業界が発達している。
アムネスティ・インターナショナルによって設立された
コントロール・アームズによると、98以上の異なった国に拠点を置く1,135以上の会社がそれらの様々なコンポーネントと弾薬と同様に
小火器を製造している。
◆ 兵器産業としての特徴
軍需産業の中でも製品としての兵器を開発し生産する産業では、他の産業に比べて以下の点で特徴がある。
・ 顧客は独占需要家:軍需産業は政府以外に顧客を持たず、外国政府への販売であっても政府が仲介を行なう。
・ 寡占市場:特定の兵器を生産できるのは1社か又はごく少数の数社のみである。
・ 性能・機能優先:兵器の取得価格は2次的な要素であり、性能・機能が優先される。
・ 競争は初期のみ:政府から兵器開発の委託契約を受けるまでが、他社との本当の競争であり、一度、兵器開発プロジェクト契約を勝ち取れば、それ以降の継続的な開発契約や実証テスト契約、少量生産契約、量産契約、保守と保守部品供給、設計変更などの長期に渡る受注が期待出来ることが多く、少なくとも他社との競争では圧倒的に優位に立てる。
・ 少数の計画:兵器は細かな用途別で多様な兵器が個別開発される傾向が少なくなり、同一の用途は1種類の兵器で賄われ用途別の兵器もできるだけファミリー化によって新たな兵器の開発を減らし、出来るだけ一元化されるようになっている。これは兵器の開発と生産を行なう企業にとっては、ある分野での兵器市場を10年以上に渡って100%独占できるか、0%になるかといった両極端な状況を生み、開発と生産の為の企業資産を長期に渡って平均的・安定的に保有することを難しくしている。
・ 保護:企業倒産による兵器技術の国外散逸や不法組織への流出を避けるために、政府は経営の思わしくない兵器企業に各種の経済的な支援を行なう。
・ 政府規制:政府の規制が多い。
・ 遅延と追加予算:開発契約は遅延され、その上、追加予算が求められることが多いが、政府はこれを受容することが多い。
◆ 世界の軍需産業収益ランキング
2007年の世界軍需産業収益順位を2006年の数値と共に以下に示す。