自動的にブレーキ制御を行うATCを日本で最初に採用した鉄道は、
1964年(
昭和39年)に開業した
東海道新幹線である
[車内信号方式のもの。地上信号方式のものでは1961年に開業した帝都高速度交通営団(現・東京地下鉄)日比谷線。]。
新幹線は最高速度210km/hでの営業運転を行うにあたり、高い安全性を備えた運転保安システムが要求された。高速運転中は地上に建植された信号機では視認する事が極めて困難である。また、高速走行中に運転士が異常や錯誤に気づいて非常ブレーキをかけても完全に停止するまでには数kmの距離を要する。当時在来線で採用されていた
ATSのように、
速度照査は行われず信号
冒進などの異常事態が発生してから動作するというバックアップ装置では、高速走行かつ安全な運行を行うためには極めて不十分なシステムであった。以上の理由により、採用された
自動列車保安装置は
スピードシグナル[スピードシグナルの対義語:ルートシグナル]の概念を基本として、
車内信号方式 (CS-ATC:CabSignal-ATC) による速度信号現示を行い、信号現示より高い速度で運転されている場合には自動的に速度を信号現示以下に減速させるシステムとなった。これがATCの開発・設計の基本理念となっている。一方、地下鉄などに採用されたATCは高速走行をしないため地上信号方式 (WS-ATC:WaysideSignal-ATC) が採用されたが、最近はこれらの鉄道でもCS-ATCが主流である。
従来形のATCは、走行速度が現示速度を超過した場合に常用最大(通常使うブレーキで最も効きが強いブレーキ)ブレーキをかけ、現示速度以下になると自動的にブレーキを緩解(緩めること)するシステムである。しかしこの方式では、結果的に停止すべき地点までに数回の常用最大ブレーキとブレーキ緩解が繰り返される事となる(このようなブレーキ制御を多段ブレーキ制御方式と称する場合がある)。このような動作は乗り心地悪化の原因であり、運転間隔短縮を実現する上での障害となってしまう。これらのATCの欠点を補った1段ブレーキ制御方式CS-ATCが
東京急行電鉄の
田園都市線で初めて導入された。その後、
東横線や東京地下鉄の一部路線などでさらに改良されたATC(ATC-P、東京地下鉄は営団新CS-ATC)が使用され、
JRグループでは同じ理由でデジタルATCが使用されはじめている。
東海道新幹線開業時
1964年に採用されたATCで、東海道新幹線は地上装置がATC-1A型最高運転速度210km/hとして設計され、続く山陽新幹線はATC-1B型とし東海道より最高速度を上げた。信号現示は0,30,70,110,160,210で、すべて現示速度は抑止速度(実際に速度超過でブレーキが作動する速度)であった。このうち0信号は地上子P点による01(ゼロイチ)、先行区間進入などの無信号区間や各種機器の故障時等による02(ゼロニ)、ループコイルによる03(ゼロサン)があり車上現示では区別がわからないが01と02では確認扱いにより進行することができる。03信号は絶対停止信号とも呼ばれ信号現示が変わらない限り進行することはできない。
東海道新幹線大阪運転所脱線事故や品川基地出入場線本線合流部・新大阪駅構内の異常信号現示により、無信号時の混信における意図しない信号現示が問題になり保安度向上の必要性に迫られた。その後、保安度向上および最高速度アップに伴う現示追加のため、2周波組み合わせ方式に改良され(ATC-1D型、山陽ATC-1W)、現在では、最高運転速度は東海道新幹線は270km/h、
山陽新幹線は300km/hとなり、信号現示は0,30,70,120,170,220,230,255,270,285,300となっている。なお、220信号以上での抑止速度は現示速度+5km/h(300のみ+3Km/h)であり、東北・上越・長野新幹線とは考え方が異なる。
東京〜
新大阪間の東海道新幹線では既にデジタルATC (ATC-NS) へ更新されており、将来的には山陽新幹線もATC-NSに移行する予定である。
東北・
上越新幹線開業時には、東海道・山陽新幹線で実績のあるATC-1型をベースに、2周波化して保安度を向上するとともに将来の最高速度アップに伴う現示追加や
電源周波数の50/60Hz両用化で全国新幹線網に対応した上位互換の地上装置ATC-1D型が採用された。しかし車両形式が異なることから、車上装置はATC-2型とされ、以後は、車両形式にかかわらず、東海道・山陽新幹線用をATC-1 (D, W) 型、東北・上越(・長野)新幹線用をATC-2型と呼称している。当初の信号現示は、0,30,70,110,160,210,240,で、後に260(長野)、275(東北・上越)が追加された。また、当初は
200系の一部編成、その後
E2系J編成・
E3系にも拡大した高速対応車両は、一部区間において、
トランスポンダを使用して240信号を読み替えることで275信号を現示する。なお、東北・上越・
長野新幹線においては、すべて現示速度=抑止速度である。東北新幹線では全線において、上越新幹線の大宮〜越後湯沢間は既にデジタルATC (DS-ATC) へ更新されており、2009年度までに上越新幹線の越後湯沢以北でもDS-ATCに移行する予定である。